2009年12月 1日 (火)

檜原村紀聞 その風土と人間

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瓜生 卓造 著

平凡社

山並みのむこうにまた山の連なる奥多摩の村々。こうした山深い場所では、かつて道は山々の尾根をつないで走っていた。人々は隣国から山伝いにやってきて、里は標高の高いところから低い方に向かって開けた。何年か前、浅間尾根を歩いて、それを実感したことがある。尾根から谷を見下ろしながら暮している者は、平地から上がってきた者とはおそらく出自を異にする。そしてその異なる世界に住んでいた者たちの視線が交錯し、混じり合い、共存しているのが現在の檜原村なのだ。

「島嶼部を除き、東京にただ一つ残された村」の自然と歴史と現在の暮しが溶け合って奏でる物語は物悲しくも美しく、文章の一つ一つが詩篇のような輝きを見せる。

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2009年11月20日 (金)

野菜探検記

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盛口 満 著

木魂社

トマトの食感がきらい。セロリやパセリのプラスチックのような歯ごたえもきらい。ニンジンの匂いも、キュウリの水っぽさも。野菜がきらいな人に理由を訪ねると、そのほとんどは野菜たちが本来持っている、動物に食べられないようにするための防衛手段、ケミカルディフェンスに由来することがわかる。
そんな身近にある野菜との関わりを通して、野菜と人間、植物と動物の関わりの歴史を解き明かしていく、知的探検の本。沖縄で学校の先生をつとめる著者が、生徒や研究仲間たちと問題を提起しあいながら、生まれた謎にひとつひとつ答えを見つけ出していく過程を書いていて、得られる洞察はきわめて深い。予備知識なしにいきなり読める平易さも魅力。

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2008年1月15日 (火)

決定版ルポライター事始

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竹中 労 著
ちくま文庫

竹中労は「無頼」漢である。「はだかんぼう」と言ってもよい。以前読んだ『琉球共和国 -汝、花を武器とせよ!』の痛烈さはここにはないが、それは我が事をふりかえるという竹中に似つかわしくない所業の所以かもしれないし、癌といういう業病にむしばまれながら書いたものが多いせいなのかもしれない。

だが窮民街に生き暮れて、人間が人間を直接殺すのを見、社会の底辺に生きるルンペンプロレタリアートの中に暮らしてそのエネルギーに触れながら革命を幻視する第四章『「探検」(ルポルタージュ)への旅立ち…』は、彼の「無頼」感の形成過程と論理を伝えていて出色。ここで「はだかんぼう」になった竹中は、一生権力の衣を身にまとうことはなかったのだ。

自由とは何からの自由なのか、読んだ者が自ら考え、行動で示してゆくしかない永遠のテーマである。


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