檜原村紀聞 その風土と人間
瓜生 卓造 著
平凡社
山並みのむこうにまた山の連なる奥多摩の村々。こうした山深い場所では、かつて道は山々の尾根をつないで走っていた。人々は隣国から山伝いにやってきて、里は標高の高いところから低い方に向かって開けた。何年か前、浅間尾根を歩いて、それを実感したことがある。尾根から谷を見下ろしながら暮している者は、平地から上がってきた者とはおそらく出自を異にする。そしてその異なる世界に住んでいた者たちの視線が交錯し、混じり合い、共存しているのが現在の檜原村なのだ。
「島嶼部を除き、東京にただ一つ残された村」の自然と歴史と現在の暮しが溶け合って奏でる物語は物悲しくも美しく、文章の一つ一つが詩篇のような輝きを見せる。
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