今回は「イランのミイラ」と称される古代の塩漬け遺体の話題です。果たして時代を越えて「生きのびる」ことができるのでしょうか。
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イランの「ソルトマン」にしのび寄る危機
テヘラン・タイムズ文化部
テヘラン発:古代のイラン人「ソルトマン」が危機的状況に。
ペルシャの通信会社CHNが今週水曜に報じたところによると、イランのミイラと呼ばれている6体の塩漬け遺体(ソルトマン)は、いずれもザンジャーン近郊のハムゼフル地方にあるチェル・アーバード塩山でここ12年のあいだに発見されたものとのことだ。
ザンジャーンのゾルファクァリ博物館に保管されている4体目のソルトマンを調査したところ、遺体は2,000年前のもので、死亡時の年齢は15歳か16歳であることがわかった。この博物館には他に3体のソルトマンが保管されている。
これらのミイラの保管用に設計されたプレキシガラスのケースは密閉が完全でない。気温や気圧の変化によってケースにひびが入り、バクテリアや虫が侵入し、ミイラを脅かしている。
4体目以外のソルトマンがいつの時代のものなのかはまだはっきりしていないが、考古学者の推定によると、1体目のソルトマンはおよそ1,700年前の人物で、死亡時の年齢は35歳から40歳である。このミイラは現在テヘランのイラン国立博物館でガラスケースに納められて陳列されている。
イラン国内には保存に必要な機器が不足しているため、6体目のソルトマンは発見された場所にそのまま置かれている。
「ソルトマンを専用の保管用ケースで保存するというのは全然当たり前のことではありません」と話すのは、チェル・アーバード塩山の考古学調査を監督するアボルファズル・アーリ氏だ。
「ケースはどんなものでも問題ありです。4体目のソルトマンのケースには内部の湿度をコントロールするために、たくさんの管が差し込まれています。しかしケースにひびが入れば、それも台無しです」と同氏はつけ加える。
「発掘後から特に外見上の変化が見られるわけではありません。しかし見た目に変化はなくても、内部組織にバクテリアが侵入し、大きなダメージを与えています。軽く調査した程度ではわからない問題なのです」というのが同氏の説明だ。
プレキシガラスのケースはイラン考古学研究センター(ICAR)出身の専門家、マニジェ・ハディアン氏の監修を受けて設計・製作されたものだ。
「いちばん性能のよいケースは4体目のミイラのために作られたものです。それでも一時的な保管にしか使えないものです」と同氏。
ひびはケースを何度も移動させたためにできたものだと同氏は考えている。
ミイラたちは当初ザンジャーン州のラクトシュイカネフ博物館に保管されていた。ソルトマンを永久保存するケースをつくるための研究はすでに完成しており、装置をつくるための資金を集める必要があるそうだ。
「1体目のソルトマンはイラン国立博物館に保管されています。発見から12年が経過していますが、特に変わった様子はありません」と同氏。
「温度や湿度、光量などの物理的条件を監視し、コントロールしてやることが、一般的にミイラを保存するうえでの必要事項です。そうした条件さえうまくコントロールできれば、文化遺産の保存には何の問題もありません」
4体目のソルトマンのケースにはデジタルの温度計が設置されており、ゾルファクァリ博物館の研究員には何か変化があればICARの専門家に連絡するように指示がしてあるという。
ところでアーリ氏によれば、長い目で見た環境の整備はザンジャーン州当局が行うべきものだそうだ。
「博物館には湿度管理のためにヒーターが設置されています。しかし博物館の中の大気の状態を思い通りにコントロールすることは不可能ですし、じっさい雨期や夏期には温度がかなりの幅で変化します」と同氏。
「ミイラが簡単に腐ってしまうことはありません。大気の状態をうまくコントロールすれば、ソルトマンを無傷のまま保存することができるでしょう。ただ現状の保管方法では長期的に見るとあまり効果的ではない、ということです」というのが同氏の意見だ。
出典: http://www.tehrantimes.com 2009年2月14日
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