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2009年9月

2009年9月20日 (日)

ニシアメリカフクロウの生息環境に政治の影

オバマ政権のフクロウ保護政策の続報です。環境保護に対する考え方がいかに政治に左右されるものかがよくわかります。前回記事は「オバマ政権とフクロウの生息数」をご覧ください。

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オバマ政権がブッシュ政権時代の森林伐採計画を白紙撤回 

ワシントン発-オバマ政権は木曜、ブッシュ政権が政権交代間際に決定した米国北西部での森林伐採拡大計画を白紙撤回し、ニシアメリカフクロウの保護計画を元通りの規模に戻すと発表した。

ケン・サラザール内務長官は木曜、オレゴン州西部の国有林での森林伐採を拡大する計画は、絶滅危惧種保護法に抵触するため継続困難であると述べた。内務省はニシアメリカフクロウに対する新たな保護措置を検討中だという。

ブッシュ政権はニシアメリカフクロウの生息数回復計画を改訂し、フクロウの優先保護区域の面積を減らして、伐採拡大の布石を敷いていた。オレゴン州西部森林計画の改訂は、米国国土管理局(BLM)の保有する何百万エーカーに及ぶ土地での森林伐採を拡大し、木材売却による収益を国が林業の盛んなオレゴン州と分け合う目的で行われた。改訂計画は作成に5年を費やし、完成はブッシュ政権末期までずれこんだ。

BLMは期限に間に合わせるため、政府派遣の生物学者にあらかじめ森林伐採がニシアメリカフクロウやサケに与える可能性のある影響を照会する必要はなく、木材の売却要請があった時点で個々に影響評価を行えばよいという主張をしたが、サラザール長官は検討の結果、それでは絶滅危惧種保護法に違反するという申し立てがあった場合に申し開きができないという見解に達したと述べた。

サラザール長官はテレビ討論会でワシントンDCからの記者の質問に対し、「ブッシュ政権のとった行動は計画を台無しにするものでした」と述べている。「ただでさえオレゴン州西部の森林保護が目立った成果をあげられていない今この時に、私たちは前政権のとった法の隙間をかいくぐり、科学の成果を傷つけるような行動のツケをまわされているのです。」

同氏は内務省の管轄下にある魚類・野生動物公園局のジュリー・マクダーナル前副局長がニシアメリカフクロウの保護に関する科学上の知見を都合よく操作していたという、昨年出された査察官の報告を何度も引き合いに出した。

同氏はさらに、木材の売却は再び北西部森林保護計画の下で管理されることになり、内務省は環境関連法規に抵触しない形で木材の売却を進める計画であるとも述べた。

ブッシュ前大統領の伐採計画通りに進んでいれば、昨年は実際の5倍もの量に当たる木材が売却されていた可能性がある。これは急激な増加ではあるが、それでも北西部森林保護計画が始動し、フクロウとサケの生息環境を保護するために伐採量が激減した1994年以前と比べると、半分に過ぎない。

北西部森林保護計画は森林保護活動家からの告訴をきっかけに作成され、ニシアメリカフクロウとサケの生息地を保護するため、オレゴン州、ワシントン州、カリフォルニア州北部の国有林の伐採を80%以上減らすことが決定された。ところが同計画に対する林産業界の反発を抑えるため、ブッシュ政権は新しいニシアメリカフクロウの生息数回復計画を作って優先保護地域の設定を見直し、オレゴン州西部森林計画改訂版を策定することに同意した。

昨年完成した新しいニシアメリカフクロウの生息数回復計画は、このフクロウに脅威となっているのは、森林伐採よりもむしろ山火事や、攻撃的なアメリカフクロウが東側から侵入してきてニシアメリカフクロウを追いだしている事態の方だという主張を展開していた。この主張により、BLMには特に北西部森林保護計画で野生動物の生息地域に指定された場所以外での伐採を拡大する余地が与えられた。

森林局環境倫理課長のアンディー・スタール氏は、木曜日の決定は「ブッシュ大統領がとったオレゴン州の魚類や野生動物の生息環境の保護を後退させる政策」を180度転換するものだ、と述べている。同氏はBLMのオレゴン州西部森林計画改訂版に対する訴訟の原告団の1人でもある。

「今回の措置でようやくブッシュ大統領の馬鹿げた政策が導入される以前の状態に戻ることができます」と同氏。

林業の業界団体、米林産資源協議会のトム・パーティン会長は、業界では北西部森林保護計画の下で十分な量の木材が確保できることを望んでおり、環境活動家からの圧力で減少していた木材の売上を、特に林業が大きな打撃を被っているオレゴン州南部で増やす努力をしたいというサラザール長官の発言に勇気づけられたと話している。

発表の少し前、現内務省書記官のネッド・ファーカー氏は弁護士からの電話取材に応え、内務省はオレゴン州西部森林計画改訂版を白紙撤回し、同計画を訴えていた4つの訴訟(うち3件は自然保護活動家から、1件は林産業界からのもの)の棄却を模索していると述べた。

 

この問題に関しては、他にも山火事の脅威は森林伐採を正当化する理由にならないとする新研究が発表されるという展開があった。山火事の脅威はブッシュ政権がニシアメリカフクロウの生息する老木林での伐採拡大を進める理由として使っていたものだ。

雑誌『保全生物学』に掲載されたこの研究は、フクロウの生息するオレゴン州やワシントン州、カリフォルニア州北部の乾燥地域で、老木林を壊滅させるほど大規模な山火事の脅威は増していないと論じている。

カリフォルニア大学デービス校で森林火災の生態学を研究し、論文の筆頭著者を務めたチャッド・ハンソン氏は、「(ニシアメリカフクロウの)生息数回復計画の下で伐採を大幅に増やすことを正当化しようとした議論は、健全な科学的根拠に基づくものではありません」と話している。「新生息数回復計画は“石橋はたたく前に渡ってしまえ”式の考え方で、きちんとしたデータを集めずに作られたものです。」

論文には1984年から2005年にかけて人工衛星から撮影された写真が掲載されており、山火事の規模がひと目でわかるようになっている。またその映像は、オレゴン州、ワシントン州、カリフォルニア州の3州にまたがるカスケード山脈の東部や、オレゴン州南部とカリフォルニア州にまたがるクラマス山脈の老木林の状況を記した政府のデータと比較できるようになっている。いずれも新生息数回復計画では山火事の危険性がきわめて高いとされた地域である。

論文によれば、老木林で大規模な山火事が発生する確率はカスケード山脈東部で1.34%、クラマス山脈で1.74%。カスケード山脈東部では746年に1度、クラマス山脈では575年に1度しか大規模な山火事が起こらない計算になる。

新生息数回復計画はこの論文より狭い地域と短い時間しか検討対象にしておらず、しかも検討結果を無理やり当てはめて結論を導いたものに過ぎない、とハンソン氏は話している。

「ブッシュ政権時代の回復計画がそうした間違った前提に基づくものであることは明らかで、今さらそれをどうこう言うことには意味がありません。問題はきちんと修正しました。一件落着です」と同氏。

 

論文の共同執筆者で、国立保全科学・保全政策センターの主任研究員であり、フクロウの生息数回復計画を巡ってブッシュ政権に論戦を挑んだニシアメリカフクロウ生息数回復計画チームの一員でもあるドミニク・デラ・サラ氏は、山火事の脅威は増していないどころではなく、森林がフクロウの生息に適した老木林へと成長していく速さは、山火事で燃えてしまうより5倍から14倍も速いのが実情だ、と述べている。

出典: http://www.msnbc.msn.com  2009年7月16日

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2009年9月18日 (金)

DNA解析によるフクロウ研究

今回はオーストラリアのメルボルンから。オーストラリアにはパワフル・アウルというすごい名前のアオバズクが生息しており、その大きさは日本のアオバズクの2倍もあります。大きくてもなかなか目にすることのできないこの鳥の生態を、DNA解析で研究しているという話題です。

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帽子に落ちてきた羽根でフクロウを研究 

ブライディ・スミス

 

メルボルンに生息するオニアオバズクの夜の生活が、研究者たちの努力で明らかになりつつある。このフクロウはなかなか姿を見せないことで有名だが、この鳥が落とした羽根をDNA指紋の鑑定に使って個体を識別することで、オニアオバズクという鳥とその生態が次第にわかるようになってきた。

 

ディーキン大学のフィオナ・ホーガン博士の手にかかると、犯罪捜査官がヒトの髪の毛を分析して犯罪者を特定するのと同じ方法で鳥の羽を分析し、ある鳥に固有のDNA指紋を識別し、種やオスメスの別はおろか、個体まで特定することが可能だ。そうした手法で得られた情報を使うことで、オーストラリア最大のフクロウであるオニアオバズクの分布や移動のパターンをマッピングしたり、鳥の夫婦が初めてつがいを形成したのがいつかを確認したりすることができるという。

ホーガン博士によれば、同氏はワランダイトでフクロウのつがいを発見し、そのDNAを解析することで、2羽の鳥が1995年からつがいを形成していたことをつきとめたという。同氏はこのDNA解析技術を使って5組のつがいのヒナの行動を3年にわたって追跡し、巣立ち後の行動を明らかにしたそうだ。

「これはフクロウの一生を通じての繁殖活動を科学的に解明した初めての事例です」と同氏。これまでのところ、同氏はメルボルンに生息するオニアオバズクのうち56羽の「指紋」を記録している。そのほとんどはヤラ川やその他河川の河口周辺の緑地帯、あるいはフラッグスタッフ・ガーデンズやセント・キルダ植物園に生息している。

同氏の研究で、都市域に生息するフクロウは概してブッシュに生息するものより互いの類縁関係が近いという事実も判明した。要するに、都市域に生息するフクロウには遺伝的多様性が少ないということになる。

「生息環境を十分に与えてやらないと、都市に生息するフクロウたちは互いの遺伝子の類似性が高くなりすぎる可能性があります」と同氏。「メルボルンに生息するオニアオバズクは、イースト・ギプスランドに生息するものより互いに近い類縁関係にあります。それはイースト・ギプスランドでは生息環境がメルボルンほど断片化していないからなのです。」 

出典: http://www.theage.com.au  2009年6月9日

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